Mag-log in主人公の梅乃が老舗妓楼で様々な経験をする。 妓楼や花魁、玉芳などから寵愛を受けて梅乃が花魁になっていく物語
view more第八十三話 隠し球 「ただいま戻りました……」 梅乃と岡田が往診から戻ってくる。 明治政府からも医者の派遣はあるが、依頼してから時間が掛かってしまう為に三原屋の岡田に依頼する見世が多い。 その度に三原屋を仲介するので、采は中抜きをしているのである。 「まぁ、妓女で稼げなくなってくるから医者で頑張ってもらわないとね……」 采は現金を数え、そこから岡田に給料を支払っている。 季節は秋が近づく頃、夏バテや気温変化で体調を崩す人が多い。 「た~んまり稼いできな」 采はニコニコしながら岡田に給料を渡す。 「どうも……」 岡田は頭を下げていた。 決して給料が高い訳ではないが衣食住が確保できている分、岡田は満足していた。 「これもあるしな……」 これとは、赤岩から受け継いだ蘭学の医術書と治療に使う道具である。 医術に幅が広がり、岡田は満足していた。 「梅乃、この後は予定あるのか?」 岡田が医術書を見せると 「どうでしょうか…… 誰かの宴席に入るとは聞いていませんが……」 梅乃は立ち上がり、采のもとへ向かう。 「お婆、今日は誰かに付く?」 「そうだね…… 特に考えてなかったが、どうした?」 「岡田先生が、この後の予定を聞いてこいと言うから…&helli
第八十二話 探偵物語江戸末期から明治初期にかけて長屋が多くあった。この日、片山が引っ越す。 今までは吉原の中にあった長屋に住んでいた。「お前が住んでいたから病気の妓女も入れなかったが、ようやくだね……」采はキセルを吹かせながらニコニコしている。「お婆、拾ってもらって……仕事まで頂き、感謝しています」 片山が頭を下げると「何、別れみたいなことを言ってるんだい! 明日だって仕事だろうが!」采は片山の頭を叩く。「そ そうでした……」片山は引っ越すだけであって、三原屋を出ていく訳ではない。 鳳仙と暮らす為に、荷物運びの為に休みを貰っただけである。「潤、こことここ…… どの長屋にするんだい?」采は吉原に通勤できるように近場を選んでいた。「それにしても、花魁だった鳳仙が長屋暮らしなんてね…… 大丈夫かい?」「はい。 良い思いはさせて貰いましたから、これからは普通の生活ができればと思います」 鳳仙は目を輝かせている。今回は下見ということで、目星を付けて帰っていく。吉原に戻り、大門で小夜が許可書を渡すと「あんな妓女《ひと》いたかしら……」 小夜が見る方向には見慣れない派手な妓女が歩いていた。
第八十一話 告白「あの……鳳仙花魁……」 片山は真っ赤な顔で見つめている。「あの片山さん、どうかされましたか?」 三原屋の台所は静寂のまま数分が経つ。全員が緊迫した場面の中、そこに橘が大きな声で 「いけ―っ!」 叫ぶと台所にいた梅乃と小夜、采までもが驚き後ろにひっくり返る。 「び びっくりした……」 「この場面での大声は心臓に悪いよ……」梅乃と小夜は、はだけた衣服を直している。「どれ、私は邪魔かね……」 橘が台所を出ると(とっくに邪魔なんだよ。 余計なことを……) 片山が橘の後ろ姿を睨む。「それで、片山さん……?」 鳳仙は片山を見つめると(うっ…… 眩しいくらいだ……) 片山の頭がクラクラとしだす。誰もが待つこと数分。“パチンッ―” 鳳仙が片山の頬を叩くと「ハッキリしてくださいな! 何ですか?」 「すみません…… その……」 なかなか言い出さない片山に、「ないなら失礼しんす……」 そう言って、鳳仙は三原屋を出ていってしまった。&nbs
第八十話 進路ある日の午後、昼見世が終わり采は売り上げの計算をしていると“クンクン……” 周囲の匂いを嗅ぎ出す。「お婆、何か匂う?」 妓女が聞くと、「なんか匂うんだよな」その言葉で妓女は匂いを確かめだす。「お前じゃなないのかい?」 妓女が古峰を睨むと「いえ、わ 私じゃありません―」 古峰は両手を振って否定する。以前、強盗が入った時に古峰が放尿して逮捕に至った。 それから匂いが古峰という事に繋がっていた。(あれはお婆が出せというから……)古峰は痛い過去を思い出してしまった。「ただいま戻りました」 梅乃と小夜が買い物から帰ってくると、「どうしたのです?」 大部屋の空気の違いに気づき、梅乃が訊く。「お お婆が匂うって言って、私が疑われたの……」 古峰が泣き顔で梅乃の腕を掴んでいる。「去年じゃない……」 小夜も呆れたように話すと、「お前たちは違うのかい?」 妓女たちはニヤニヤしながら三人を見る。(まだ子供の感覚だったのか……)夕方になり、引手茶屋に向かう準備を始める頃、「梅乃、さっき話が来て花緒に付いてくれるかい?」 采が言うと「わかりました。 じゃ、いってきます」 梅乃が駆け足で向かっていく。&nbs